川崎大師 松月庵(約170m)
川崎大師の仲見世通りの入り口付近、車道が交わる角にある「松月庵」は大師門前でもひときわ目立つ蕎麦の老舗。外2と呼ばれる割合(蕎麦粉10対つなぎ2)で手打ちされる蕎麦を、カツオのダシが強く効いた伝統のつけ汁で頂くという江戸前のスタイルは創業の1884(明治17)年から変わっていない。
この店に入って印象的なのは、ツアーの観光客が訪れても対応できる十分な席数を持ちながらも、ひとりひとりのお客さんに対して丁寧に向き合うという、謙虚な空気が漂っていることだろう。隅々まで清掃された店内、心のこもった接客と挨拶に、“殿様商売をしている店なのだろう”と見込んだ自分の先入観を恥じてしまった。まったく、正直な商売でここまで大きな店を保つというのは、並大抵の努力ではないことが偲ばれる。
店主の須山まもる氏はこの店の4代目。曽祖父の代から祖父、父と引き継がれ、仕事を手伝ううちに蕎麦作りを覚えていったという。しかし氏は父の味に満足するのではなく、父の蕎麦を超えるために多くの老舗蕎麦店を訪ね歩き、自身の蕎麦作りの糧となる知識を蓄えていった。その味と熱意はついに父をも納得させ、いま、店の経営は氏の腕にゆだねられている。
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