川越一番街を散策

時の鐘

平成8年6月に環境庁主催の「残したい日本の音風景百選」に選ばれた「時の鐘」は、午前6時、正午、午後3時、午後6時に時を告げるために鳴り響く。そのため、川越一番街商店街で働いている人はその鐘の音を合図にランチへと繰り出し、学生達は夕方の鐘の音を合図に家路に急ぐのだ。そんな生活に密着した「時の鐘」は400年以上前から鳴っており、これが4台目。寛永年間(1624年~44年)に川越城主酒井忠勝が、城下多賀町 (いまの幸町)に建てたものが最初といわれており、現在の鐘楼は、明治26年(1893)に起きた川越大火の翌年に再建されたもの。3層構造の塔で、高さ約16メートルもある。暮らしに欠かせない「時」を告げてきた川越のシンボルは、もちろん観光客にも大人気。大晦日には上にのぼって鐘を鳴らすことができるため、境内は大混雑になる。その鐘があるのは、川越の大人気エリア「一番街」だ。

川越一番街商店街

大きな鬼瓦の屋根に、黒しっくいの壁と分厚い観音開きの扉…と、まるでタイムスリップしてしまったかの様な錯覚に陥る、蔵造りの趣豊かな建物が立ち並ぶ有名な商店街であり、関東有数の観光地でもある。その一軒一軒は同じように見えて違う造りをしており、それぞれに個性を出しながら堂々とした風格さえ漂わせている。

大沢家住宅

その中で最も古く、1792年(寛政4)に建てられた大沢家住宅は川越で唯一国の重要文化財に指定されている由緒あるもの。全国的に有名なこの場所に私達家族は、最近、転居してきた。そのため、週末は専ら市内(特に一番街周辺)を散策するのを楽しみにしているのだ。なにしろ、ここには50軒以上の江戸情緒あふれる商家が軒を連ねている。

笛木醤油 川越店

中でも私は、「笛木醤油 川越店」のお醤油を愛用中だ。こちらでは創業以来伝統的な醸造方法を守り続けており、杉桶の中でゆっくり時をかけ作り上げる醤油はスーパーのそれとは一味違うのだ。また、川越はさつま芋の名産地なので、「いもぜんざい(さつまいもとお餅)」や「川越名物芋そうめん」などが食べられるお店も多い。これらは、他県のお客さんになかなか好評だ。

割烹旅館 佐久間

また、川越には島崎藤村ゆかりのスポットも多数点在する。氏の二度目の妻として、文豪の後半生を支えた静子夫人の実家が川越(当時)にあったこと、静子夫人の母・みきさんの墓が中院(川越市仙波)にあることなどが、その理由だ。代表的な場所は、「割烹旅館 佐久間」。ここには原稿執筆のために泊まった部屋や所縁の品々がたくさん残っているので、文学ファンは是非一度訪れてみて欲しい。

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また、毎年10月の中旬の土日曜日には「川越祭り」が開催されるので、こちらも一見の価値ありだ。1648年(江戸時代)から続く大変由緒のあるお祭りであり、立派な「鉾山車(祇園祭等で有名)」が町中を練り歩く様子は大変な迫力だ。また、神田祭の流れを汲んだ大変威勢のいい「お囃子」も見もので、山車同様に町ごと音色が違うのも面白い。これに合わせて、ヒョットコやオカメなどのユーモラスな踊りや白狐の迫力のある踊りなど、様々なお面をつけた個性豊かな踊りが舞われるのだ。夜になるとますますお祭りは盛り上がり、あちこちで山車が引き回され、交差点などで出会うと、回り舞台が回され正面を向き合ってそれぞれのお囃子や踊りを見せ、競い合う(曳っかわせと言う)。普段はシットリ落ち着いた街並みの一番街も、この日は全体が燃え上がり「激しい活気のある街並み」へ変化するのだ。川越の全てを知る上で、この祭りの見学は外せないと言えるだろう。

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